絶滅危惧種とは?
「絶滅危惧種」とは、その生存が脅かされている野生生物の種、文字通り絶滅が危惧されている種を指し、これらの種は様々な理由で絶滅の危機に瀕していると考えられています。絶滅危惧種は、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストによって分類され、そのリスクのレベルに応じて異なるカテゴリに分けられています。生き物はある個体数を下回ると、自然に淘汰されていってしまうといいますが、現在絶滅が危惧されている種の中には人間が原因としてかかわっているものも多く、保護の必要があります。驚くべきことに、実に4万4,016種の野生生物が「絶滅危機種」としてリストにあげられています。 (2023年12月現在)
絶滅危惧種のカテゴリ
1. 絶滅(EX) : 野生において個体が確認されなくなった種。
2. 野生絶滅(EW): 野生では絶滅し、飼育下または人工的な環境のみに存在する種。
3. 近絶滅種(CR) : 絶滅の危機が非常に高い種。
4. 絶滅危惧種(EN) : 近い将来に絶滅する危険が非常に高い種。
5. 危急種(VU) : 近い将来に絶滅する危険が高い種。
6.近危急種(NT) : 絶滅の危険性は現時点で低いが、将来的に危急種や絶滅危惧種になる可能性がある種。
7. 低危険種(LC) : 絶滅の危険性が比較的低い種。
8. 情報不足種(DD) : 現在の情報が不足しており、絶滅リスクを評価できない種。
9. 評価対象外 (NE) : まだ評価が行われていない種。
このうちいわゆる絶滅危惧種といわれるのは、3. 近絶滅種(CR)、4. 絶滅危惧種(EN)、5. 危急種(VU)の3つのカテゴリに分類されているもの。種として確認されている野生生物は215万3,294種で、IUCNのレッドリストでは、このうちの15万7,190種の絶滅危機を評価しているとのこと。これはあくまで「評価」しているだけで、全ての種が確認されている訳ではありません。未発見のものも含めると、地球上にはまだまだ生物が存在するといわれ、その総数は数百万種とも数千万種とも推測されています。
絶滅危惧種となる主な原因
生物が絶滅危惧種に陥る原因は多岐にわたり、主に以下のような要因が挙げられます。
1. 生息地の破壊
開発活動: 農地、住宅地、工業地域などへの開発により、生物の生息地が失われる。
森林伐採: 農業、木材採取、都市開発のための森林伐採が生息地を破壊。
2. 気候変動
気温の変化: 地球温暖化による気温上昇が、特定の種にとって生存困難な環境を作り出す。
生態系の変化: 気候変動により生態系が変化し、生物に適した環境が失われる。
3. 過剰な狩猟・漁獲
商業的搾取: 商業目的での狩猟や漁獲により、特定の動物や魚類の個体数が激減。
密猟: 象牙や動物の毛皮、伝統医薬の材料などの需要による密猟。
4. 外来種の侵入
競争と捕食: 外来種が在来種の食料源を奪ったり、直接捕食したりする。
病気の伝播: 外来種が持ち込む病原体が在来種に感染し、大量死を引き起こすことがある。
5. 汚染
化学物質: 工業化学物質、農薬、重金属などの汚染が生物の生存に悪影響を及ぼす。
プラスチック汚染: 海洋におけるプラスチック汚染が、海洋生物に影響を与える。
6. 遺伝的多様性の喪失
個体数の減少: 遺伝的多様性が低下し、適応能力の低下や繁殖能力の減退を招く。
これらの原因は、しばしば複合的に作用し、生物種の絶滅危惧状態を加速させます。人間活動がこれらの問題の多くに直接的または間接的に関与しているため、環境保護と持続可能な資源管理が絶滅危惧種を救う鍵となります。また、生物多様性の重要性についての認識を高めること、法的保護措置の強化、教育プログラムの推進、生息地の保全や再生プロジェクトなども重要な取り組みです。
特に重要なのは、人間と自然が共存できる持続可能な方法を見つけることです。これには、地域コミュニティの参加と協力が不可欠であり、地域固有の生物種と生態系を保護するための地元住民の役割は非常に大きいです。また、グローバルな規模での協力や国際的な取り組みも、絶滅の危機に瀕している生物種の保全には欠かせません。
絶滅危惧種の保護は、単に一種の生物を救うことだけではなく、地球上の生命の多様性を維持し、全ての生物が共存する健康な生態系を保つことに直結しています。それは、最終的には人類自身の生存にも影響を与えるため、私たち一人ひとりにとっても非常に重要な課題です。
絶滅危惧種の多い国・地域
マダガスカル 3,758種
エクアドル 2,623種
メキシコ 2,371種
ブラジル 2,216種
インドネシア 2,196種
マレーシア 2,071種
アメリカ合衆国 1,913種
オーストラリア 1,845種
コロンビア 1,665種
フィリピン 1,595種
主な絶滅危惧種
ジャワサイ(Javan Rhino)
生息地: 主にインドネシアのジャワ島にあるウジュン・クロン国立公園。
状況: 野生の個体数は非常に少なく、生息地の破壊と密猟が主な脅威です。
アムールトラ(Amur Tiger)
生息地: ロシア極東地域、特にアムール川流域に接する森林地帯。
状況: 密猟や生息地の減少により、野生の個体数が減少しています。
マウンテンゴリラ(Mountain Gorilla)
生息地: アフリカのウガンダ、ルワンダ、コンゴ民主共和国にまたがるヴィルンガ山地。
状況: 狩猟、病気、森林伐採による生息地の破壊などが原因で絶滅の危機に瀕しています。
カリフォルニアコンドル(California Condor)
生息地: アメリカ合衆国のカリフォルニア州、アリゾナ州の一部地域。
状況: かつて絶滅の危機に瀕しましたが、保護プログラムにより少数が野生に復帰しています。
ホッキョクグマ(Polar Bear)
生息地: 北極圏、特にアメリカ(アラスカ)、カナダ、ロシア、北極圏
状況: 気候変動による海氷の減少が主な脅威となっています。
オランウータン(Orangutan)
生息地:インドネシア(スマトラ島北部、ボルネオ島)、マレーシア(ボルネオ島)
状況:パーム油プランテーションの拡大などによる生息地の破壊
(画像はイメージです。)